スポンサーリンク
『夢を諦めたからといって全てを失うわけではない。蓄積されたノウハウはあなたの武器だ』
あるところにプロの絵描きを目指す青年がいた。
青年とはいえ、絵を描き始めてから10数年。年齢は40代そこそこだ。
長く描き続けているが、なかなか芽が出ず、今も編集者から「君には才能がない」と言われたばかりだった。
帰路につく青年は落ち込み、悲しんでいた。
これまでも何度も敗北や挫折は経験してきた。
あまりの辛さに泣いたこともあった。
悔しさや腹立たしさも何度も我慢した。
だが、ここまでやったのだからこれで成功しなきゃ。これしか道はない。そう自分に言い聞かせていた。
青年の心は限界ギリギリだった。
ちょうどその時、偶然高校の時の友人と出くわした。
「あぁ、今日は誰とも会いたくなかったのにな」
そう思ったが、友人とお茶をすることになってしまった。
雑談をしているうち仕事の話になった。
悪気はなかったが、ついうっかりして青年は愚痴をこぼした。
「君はいいよな。成功一辺倒だもんね」
青年が出会った友人はすでにビジネスで成功を収めていた。そのことが青年には羨ましかった。
「実はそうでもないんだ」と、友人は笑った。
「僕は小さい頃から大人になってもずっとバスケをやっていた。プロになるっていう夢を掲げてね。
やるからには世界一を目指そうと努力を重ねた。死ぬ物狂いでやったよ。練習だけでなく、理論についても学んだ。
でも20年という歳月を費やしたけど、夢を叶えることはできなかった。僕には才能がなかったんだ。
悩み苦しみ、絶望した。今までのものが全て無駄になったと思えた。
「僕のこの20年間は一体何だったのだろう」
抜け殻のようになり、生きる糧を失い、夢も何もなかった。
僕の人生は終わった。そう思っていた。
僕はボロボロだったんだ。
それを心配したある知人が仕事を紹介してくれて、働かせてもらうことになった。
とはいえ、やる気はなかった。
「私の夢は破れたのだ。もう終わった」
心の中ではいつもこう思っていたよ。
でも、それではさすがに勧めてくれた知人に申し訳が立たないと思ってさ。少しずつ変わろうと熱心に仕事に取り組んだんだよ。
はじめのうちはまだ傷が癒えてなくて、しんどさを感じた。急に落ち込むこともあった。
それでも、一心不乱に仕事をしていくうち、だんだんと夢を追いかけている時と共通する点をいくつか見つけることができた。
ジャンルは違うものの通ずるものがあったんだ。
ほら、よく一流のプロスポーツ選手が語ることはビジネスでも通ずることがあるだろう?あれだよ。
その時気がついたんだ。確かに僕は夢に破れた。
僕には才能がなかった。
費やした歳月はすべて水の泡となった。
かのように見えた。
でも、実際はそうじゃなかったんだって。
そこで培った経験や理論はそのまま他のことでも横展開することが出来たんだよ。
僕は知らぬ間に他で通用する技術を得ていたんだ。自分で言うのも恥ずかしいけれど。
そのことに気が付いたら、急にやる気が出てきたんだ。
「僕の人生は終わってなんかない!まだこれからだ!」
そう思えるようにもなってきた。
そう思えたら、今度は新たな夢まで思い浮かんできた。
そこでまた、夢を追いかけているのさ」
「あっ、確か君の会社って」
「そう。バスケチームのコンサル会社。
監督の育成、選手のコーチング、メンタルケア。
僕にはプレイヤーとしてよりもこっちの方が才能があったみたいだね。
君に何があったのかはわからないけどさ。元気出してね。君のキラキラ輝く目を見ているのが、昔っから好きだったんだぜ。
人生に無駄なことなんて何一つないんだな〜。さっ、そろそろ店を出ようか」
二人は会った時よりもいい笑顔で手を振り合っていた。
本日の教訓
■夢に固執しなくても良い
今までの努力が水の泡になるからこれで成功しなきゃならない。などということはない。
一芸に秀でるものは全てを制す。
そこで手に入れたノウハウは他でも生かすことが出来るのだ。
無駄になるからという理由で無理して夢を追いかける必要はないのだ。夢に固執しなくても良い。夢に破れても良い。
そのうち新たな夢は見つかる。
スポンサーリンク