『アドバイスをするときは注意が必要だ。求められていないアドバイスはするべきではない』
先週、無知見ちゃんにゲームのことを教えた夢幻はとてもよい気分だった。
夢幻はこれまで博識に教えてもらうばっかりで自分の知識が誰かの役に立てるなどと一度も思ったことがない。
はじめて自分が人の役に立てた。
このことが夢幻の心を躍らせていた。
そして、今日は無知見ちゃんとゲームをする約束の日。夢幻は遊ぶ前から浮き足立っていた。
「あっ、無知見ちゃん。今日も一緒にゲームして遊ぼう!」
手を振る夢幻に対し、無知見も笑顔で応えた。
「さて、早速だけど先週言っていた装備の問題は解決した?」
夢幻は少しからかうように無知見に尋ねた。
「あ、当たり前じゃない!あれは少しからかってみたかっただけ!あんな初歩的なミスするわけないでしょ」
冗談を言いながら2人はゲームを起動させた。
「今日はまずこのクエストからやってみようか」
「うん、いいよ。わからないことがあったら教えてね」
その後、夢幻も無知見もゲームを楽しんでいた。しばらくすると夢幻は無知見にアドバイスし始めた。
「無知見ちゃん、違うよ!ここはこうするといいよ」
「あっ、無知見ちゃん。今度はこっちこっち。この方が早くクエストを終わらせることができるんだ」
「無知見ちゃん、このボスには物理攻撃より魔法攻撃の方がいいよ!」
夢幻は先週同様、あまりゲームを知らない無知見にどんどんアドバイスをしていった。夢幻の頭には無知見に喜んでもらった顔が思い浮かんでいる。
今日も喜んでもらえたら嬉しいな。
夢幻の頭の中はそのことでいっぱいだ。
夢幻はすっかりと気分が良くなっていた。
が、だんだんと無知見の顔がふくれっ面になってきた。
しかし、夢幻は無知見の様子に気が付かず、まだアドバイスを続けている。
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「あっ…ここはね…」
突然、無知見が口を開いた。
「つまらない!つまらない!つまらないー!!
もう今日はゲームやめる!夢幻くんなんて嫌いだー!」
突如怒り始めた無知見に夢幻は呆気にとられていた。
「ど、どうしたの?僕、何かした?」
慌てて夢幻が質問すると無知見はこう答えた。
「どうしたもこうしたもないわよっ!夢幻くんが何もかもアドバイスしてくるから何も考えることがなくて、つまらないのーーー!!
私だって、下手でも自分なりに考えてやってみたいの。はじめから何もかも教えてもらったらつまらないじゃない」
「えっ?だって、無知見ちゃんさっき教えてね。って言ってたじゃん。。教え方が悪かった?」
夢幻は見るからにしょんぼりしている。
構わず、無知見が続けた。
「ううん。教え方の問題じゃないの。すごくわかりやすかった。
でも…
でも私は、わからなかったら教えてね。って言ったの!
だから私は自分でわかりそうなことは自分で考えて楽しみたかったのよ。それを夢幻くんが全部アドバイスするものだから、すごくつまらなくなっちゃったの!
教えて欲しくもないアドバイスはいらないアドバイスなのよ!
夢幻くんのバカー!!!」
夢幻くんのバカ。
夢幻くんのバカ…
夢幻くんのバカ……
夢幻はこの日から数日間この言葉にうなされたのであった。
本日の教訓
■求められてからアドバイスを行おう
何でもかんでもアドバイスしようとすると相手から煙たがられる。アドバイスをして気を良くしたからといって、アドバイスしすぎることはかえって害となるのだ。
余計なお世話だと言われないよう、求められた時にアドバイスをしよう。
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