1. 心の在り方
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問題は常に起きるもの

大和宏が勤める会社ではいつも問題が山積みになっていた。特に社員が怠慢になっているからというわけではない。問題の数が多すぎるのだ。生産部門、小売部門、人材派遣部門、メンテナンス部門、果ては農業経営と管理する箇所が多く、細かいものから大きなものまで様々な問題が点在する。

各部署で対応できれば良いのだが、それほど規模の大きな会社ではないことと社の中心人物が揃って定年退職したことも相まって、その担い手を大和が一挙に引き受けることとなった。問題がこれほどまでに多いとは予想もしていなかったが、社も大和もなんとか問題に潰されず持ちこたえていた。

一つ問題を片付けたと思ったら、また新たに問題が浮上し、また改善を行う。浮上してくる問題が一つであれば、何も難しい事ではないのだが、問題もそう単純ではない。複数問題が持ち上がることもあれば、解決したかと思うと誘発されて、別の問題が浮上することだってある。やっとの思いで解決した問題も実は解決していないということだってある。この問題には大和もいつも手を焼いていた。

常に問題の改善と発生の繰り返しなのだ。大和はこの問題が繰り返されるサイクルがとても嫌いだった。そのため、問題が起こるとすぐさま解決案を考え、改善し続けていた。問題が起こることも溜まることも全てストレスになる。ストレスを溜め込まないためには、すぐに問題を消し去るしかない。そう思っていたからだ。

大和は問題を見るといつも嫌気が指していた。いくら解決しても次から次へと出てくる問題にはストレスを感じる。問題が起こると喜んでいる奴がいるが、意味がわからない。あいつの頭の中はどうなっているのか。大和は込み上げてくるイライラを制御できずにぶつぶつと呟いていた。

それでも大和は律儀に問題を解決してきたが、あまりの問題の多さと繰り返しにうんざりとする日も増えてきていた。いつになれば、この苦しみから解放されるのか。大和は深くため息をついた。問題が底をつけば、悩みも解決されるだろう。それまでの辛抱だ。大和は重い気分を抱えたまま、また仕事に取り掛かった。

だが、一年が経過しても、問題が解決されることはなかった。依然、山積みのままなのだ。変わったことと言えば、問題の内容が新たなものに入れ替わったこと、大和の問題を解決させるまでの時間が短くなったことの二点である。

せっかく問題を解決させ続けてきたのに、内容が新たなものに変わっただけならどうしたら良いのか。問題がなくなることを目標としてきただけに、なくならないことにはかなりげんなりとしてしまった。当然のことながら、大和のそのような思いも御構い無しに問題は依然として降り注ぎ続けている。腹立たしさと苦痛とが入り混じり、大和はとても疲弊していた。もう問題など見たくもない。どうせ新たな問題が浮上するだけなら、端から解決などさせなければ良い。大和はやけっぱちになり、あらぬことを考えていた。考えたところで何も状況は変わらないのだが。

そうこうしているうちに社から功績を称えられ、大和は昇進を果たした。だが、大和は少しも喜んでいなかった。どうせ、昇進したからという理由で問題を人に押し付けるに違いないと思っていたからだ。そんな折、大和は社の役員から直々に呼び出され、賞賛の言葉を与えられた。

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「ここ最近の君の目覚ましい成長には社長共々、大いに喜んでいる。素晴らしい貢献だ。これからも精進してくれたまえ」

役員からの言葉でも信じられない大和は思わず質問をした。
「あの常務。失礼ですが、おっしゃっている意味が少しもわからないのですが。。」

「何を言っているのだね君は。冗談はよしたまえ。君は今の職務につき始めてから、問題の解決スピード、問題の原因を突き止める能力、斬新な解決案の提示と様々な点で目覚ましい成長を見せたではないか。職務につき始めた初期の頃に比べると、今ではその処理能力は二.五倍ほどになっている。それはしっかりとデータでも出ているのだよ。これを成長と呼ばずになんと呼ぶのだね?」

「はぁ。私自身、目の前の問題をただただ解決させていただけで、何も成長など感じていなかったのですが。それよりも問題が絶えず溢れ出てくることにうんざりする一方で」

またとない機会に大和は腹の内を明かした。もしかしたら、これを機に違う職務にしてもらえるかもなどと思っていたのかもしれない。とにかく思っていることを全てこの役員にぶつけた。

しかし、役員から返された言葉は大和を驚かせた。

「君も随分と面白いことを言うのだな。成長というのは自分ではわからないものなのだよ。人と話をしたり、一昨年の自分と比較することで成長ということを感じ取ることができる。それに問題というものは常に起きるものなのだよ。君も実感したとおりだ」

そう、私はこの一年ずっと問題と戦い続けていた。問題は常に起こる。だからこそ、悩んでいるのではないか。それを問題が起きるのだよという言葉で片付けられては何も発展がないではないか。

そう思って失望し始めた時、役員から出た次の言葉に大和は驚きを隠せなかった。

「問題は常に起きる。だからといって、落ち込むことはない。君が短期間の間に目覚ましい成長をしたのはなぜだと思うだろうか。それは問題が多く起きたからだ。ようするに、問題の数だけ成長する機会があったということだ。君はそれを愚直にこなした。だからこそ、成長につながったのだよ。

つまり何が言いたいかというと問題が起こることは嫌なことでもなんでもなく、自己や社を成長させるラッキーイベントだということだ。この発想の転換ができることが非常に重要だな。

問題はほとんど常に起きる。なくなることはない。となれば、嫌なことだと思うのではなく、良いことだと思えるようにした方が良い。常に起き続けるからだ。事実、先にも述べた通り問題は自己を成長させてくれるラッキーイベントだ。問題が起きてくれることは良い事なのだよ。

自分が成長していないと思うのなら、いろんな人と問題について話し合ってみると良い。君ほど多くの問題を解決したものはなかなかいないだろうからな」

問題が起きるとは嫌なことだと思っていた。しかし、成長という面で問題は事業やあなたをより成長させる素晴らしいラッキーイベントだったのだ。

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