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小さな賢者の功績【後編】

しかし、黒石は再び立ち上がり胸を張って声を張り上げた。

「しかし!しかしこれでは社が良くなるはずもありません!!」
皆がまた黒石に振り返る。

「これまで我が社はこのようなことを繰り返してきました。ですが、その結果が現在に現れているのではないでしょうか?また同じことを行うのでは、得られる結果は同じです!そうなれば、社の倒産は免れません!」

「貴様!そこまで楯突いておいてそれ以上くだらないことでも言ってみろ!減給どころでは済まさないぞ!!」専務が声を荒げる。

と、その時だった。会長は専務に向かって口を挟んだ。
「とても面白い話じゃないか。少し聞かせてもらえないかね?」

「しかし!会長!我らの批判をする奴の話なんぞあてになりませんよ?!」
すると、会長は専務に向かってこう言った。

「私は問題解決をしてくれる方法を探している。私も長年、このやり方には疑問を持ち続けていた。話を聞く価値は大いにあると私は思うのだが。それに、この状況で意見を言ってくれるだけでも敬意を払いたいというものだ」

「さ、続けてくれないか?」
そこで黒石は思い切って自らの体験を語った。

「私には現在四歳の子供がおります。私はこの息子から多くのことを学んでいます。息子はどんな些細なことでも疑問に持ちます。そして、そのことを口に出して質問をしてくるのです。

「どうして虹はたくさんの色があるの?」
私はそれは色が分解されているからだと答えました。すると息子は
「分解って何?」
と、そう聞くのです。

そのことに私は一つ一つに分けることだと答えました。
すると今度は「なぜ分けなくてはならないの?」とそう聞いてきます。

それは一つずつに分けないとわからないからだと答えれば、「なぜわからないといけないの?」という質問。
それは解析をするためだと答えれば
「解析って?」
という答えが返ってきます。

はっきり言ってこの我が子のなぜなぜ攻撃にはいつも参っています。それに子供というのは本当に細かいところにまで観察してもいるのです。ですが、ここに大きなヒントがあると思っているのです」

「何を言っているんだ君は!幼児の遊びとは違うんだぞ!!ふざけているのか!」
また専務が口を挟む。

黒石は続けた。
「わ、我々は問題が起きた時、ここまで疑問を持ってきたでしょうか?ひ、表面的なことばかりに注目して問題を終わらせてはいなかったでしょうか?

…私はこの息子からのなぜなぜ攻撃を受けていつも回答に苦労しています。ですが、同時に思うこともあるのです。

分析をするということは表面的なことからなぜ?という疑問を持ち続けて、問題を掘り下げて本質を突くことなのではないかということです。私は息子からの質問を答え続けるうちに「そういえばそれってどういうことなのだろう」という気づきを得ることが多くありました。

頭に汗をかき、一つのことに対して考えを巡らし続けること。もうこれ以上ないというところまでたどり着くこと。
これこそが分析なのだと思うのです。

このことは息子からの質問に答えるだけでなく、あらゆる場面でも通用するのではないかと私は思っています。

観察も同じです。息子はいつも気になる対象を見つければ、何十分でも見続けます。それは小さな所作も見逃さないほど。時には実験を行い、残虐な結果を招くこともあります。ですが、その中で学習し次に活かしていることだってあるのです。

ですので、まずは徹底的な分析を!そして、それに伴い小さなことをも見逃さないほどの観察。これこそが我が社を成功を導く鍵になるのではないでしょうか!

私から申し上げたいことは以上です」

取締役会一同は静まり返っていた。専務が口を挟む。
「言いたいことはそ…」
と、突然会長がバン!と両手でデスクを勢いよく叩き、立ち上がった。

「我が社に欠けているのは、それだよ!」

「しかし!会長!こんな者の意見など取り上げるに値しません!」
すると今度は常務が立ち上がって、専務に向かって口を挟んだ。

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「失礼ですが、専務は先程から議題に答えるだけで質問の深掘りを一度も行っていませんでしたね?そんなことでどうやって問題をあぶり出すというのですか?寒いから購買意欲が落ちた?広告費が足りないからもっと投入しよう?

そんなことで解決の糸口が見つかるのでしょうか?

もっと彼の言うようになぜこうなったのだろう?と問題を深掘りすることが先決なのではないでしょうか?」

「その点に関しては前々から指摘し続けていると思いますが、実行してくださっていたのは会長と常務だけでしたね。なぜ私が今まで散々言ってきたにも関わらず、実行なさらなかったのです?」
今度は社外取締役の一人が社長、副社長、専務らに向かって問いかける。

「ぐっ!な、何か!これに対する意見はありませんか!?」
専務は必死になり問いかけた。だが、社長らはバツの悪そうな顔を浮かべうつむくだけで誰も何も発しなかった。

「ったく!どいつもこいつも!」

「他人を非難して被害者の気になっているかも知れませんが、専務。あなたにも当然責任はありますよ」社外取締役の一人が専務に向けて言うと、専務は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべることしかできなかった。

「いや、実に素晴らしい!では早速その『なぜなぜ』を使って問題を深掘りし、分析を行おうではないか」

それから半年間、社内ではありとあらゆるデータを本当に分析し、見えていなかった本質、問題点の炙り出しに成功した。この時点ではまだ経営は傾いたままである。倒産まであと半年と焦るなか、その四ヶ月後。

ついに分析の集大成が芽を出した。すぐに全盛期のような盛り上がりを見せたわけではないが、ほんの少し売り上げが上昇したのだ。それに今まで見えていなかった社内部の他の問題も顕在化し、社内の雰囲気にも活気が溢れるようになってきた。

こうして倒産すると言われていた期限をなんとか持ちこたえ、徐々にプラスを増やし始めた。黒石はこの功績を認められ、昇進を果たした。

それまでいた面々はと言うと…揃って外に締め出されていた。今現在は会長と元常務の社長、新しく副社長に就任した黒石に加え、専務、三名の社外取締役の計八名である。この新体制は期待ができそうだと株価にも影響を受けた。

功績を認める表彰式では黒石と共に小さな賢者が参加していた。
賢者を讃えると三千人を越える社員が参加する中、この賢者は会長に向かってこう言った。
「ねえ、ひょうしょうしきってなあに?」

「表彰っていうのは偉い人を讃えることだよ」会長がそう言うと黒石は引きつった表情を見せた。
「えらいひとってなあに?」やっぱりかと黒石は額に手を当てる。黙らせようとする黒石を会長が制した。

「偉い人っていうのは立派な仕事をした人のことだよ」
「ふーん、そういうのがえらいっていうんだ?」
すると、会長は少しの間沈黙した。

「いや、確かにそれだけが偉いというわけではないな。成功へと導くものも偉い。それに…

それに我が社でベストを尽くしてくれている社員は皆偉いじゃないか!」
そういうと会長は参加者の方を向きこう言った。

「よし!社の五十周年、倒産からの脱却を記念してパート・アルバイトを含む全社員に金一封を贈呈する!もちろん私の資産からな」
当然のことながら、会場内は歓喜に満ち溢れた。ただ一人を除いて。

「ねえ、きんいっぷうってなあに?」

私は専務らが挙げたこのような話を社の中心人物たちが話し合っていることを本当に聞いたことがある。

その時はまさかと耳を疑ったが、本当にその程度のことしか分析を行っていなかった。

また売り上げ分析を行った本人もただ情報をまとめただけで、なぜ売り上げに変動があったのか?などの事実を深掘りするわけではなく、「今期は好調ですね」と言うだけに留まっていた。そして、自分たちはしっかりと分析して貢献しているということに酔いしれていたのである。

分析とはただ情報をまとめて眺めるだけのことを言うのではない。情報を一つずつなぜこうなったのだろう?と深掘りし、紐解くことを分析と言うのだ。

決して分析しているつもりになってはいけない。本当の分析とは幼い子が尋ねるように、これ以上細かく出来ないというところまで分解して要因を探ることなのである。

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