1. 心の在り方
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問題が起きてしまった後の心構え

時より落ち込むことは誰にだってある。この男、倉山宏和ももちろんその例外ではない。
その男は見るからに落ち込んでいた。倉山は失敗をするといつも激しく落ち込んでしまう。

そのことは本人も周りも承知していた。倉山本人は落ち込みたくないと思っている。落ち込むのは辛いからだ。

そんなことはわかりきったことだったが、わかりきったところでどうなることでもない。落ち込んでしまうのだから、落ち込んでしまうのだ。どうにかしようものなら、どうにかしてもらいたいものだ、と倉山は思っていた。

今回倉山が落ち込んでいたことはちょっとしたうっかりミスだ。

しっかりと確認しておけば、起こらなかったであろうミスで本当に些細なものであった。言うなれば、佐藤さんの名前を誤って斎藤さんと呼んでしまったというレベルである。謝れば済む話で特に深く気にする必要はないだろう。

しかし、倉山は間違えたことに深く落ち込んでいた。周りからは気にすることはないよ。誰にでもあることさ。と励ましの言葉をかけてもらっていた。

倉山はまた、些細なミスをして落ち込んでいた。社に戻ってくるなり、ため息をつき、うつむき加減でトボトボと廊下を歩き、自分の机に向かって歩いていた。

話を聞くと情報がうまく探せず、お客を十分程度待たせてしまったとのことだ。深く落ち込む倉山にまた一人励ましの声を掛け、また一人共感し共にうなづき、また一人優しく話を聞き、倉山を立ち直らせていた。

五人ほどが声を掛けたところで、ようやく少し倉山にいつもの笑顔が見られた。それでも時よりはぁとため息をつく姿を新井は遠巻きに見つめていた。

新井は倉山の同僚だが落ち込む倉山を見て、共感し同情の声をかけるなど一切したことはない。傷の舐め合いなど理解ができなかったからだ。そんなことをしたところで何が変わるのだろうか。

だから、新井は一度も声など掛けたことはないし、これからも掛けるつもりもない。お互い特に仲が悪いわけではないのだが、新井はさばさばした性格ゆえ、そのような行為が気に入らないのだ。倉山のことは人間としては好きでも、同情や共感はまた別物だと新井は考えていた。

そこへ、倉山がまたミスを犯した。今度は相手を怒らせるようなミスで少しだけいつもより事の重大さが大きい内容であった。激しく落胆していたが、もう一つとある噂を聞いた。

新井が大きなミスをしたというのだ。新井は同期の中でも優れた人材で、特に目立ったミスはこれまでしてきたことがなかった。普段ミスをする事のない新井がミスをするなんて。きっと落ち込んでいるに違いない。倉山は落ち込む体に鞭を打って、友の元へ向かった。

これまで励まされてばかりであったが、このときばかりは人の役に立てる喜びを噛み締めていた。どんな言葉をかけてあげようかと思うと、足早になり逸る気持ちを堪えられずにいた。

思わず、「今から行くから第二会議室で待ってて」なんて柄にもないメールを送ってしまった。新井からは「おう」とそれだけ返信があった。これは相当落ち込んでいる。急がなくては。ドキドキが止まらない。

落ち着けと息を大きく吐き、バンと力強くドアを開けた。

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そこには平然とした新井の姿があった。なに食わぬいつもの表情で「お疲れ。」とだけ、新井は言った。その様子に少しあっけに取られた倉山であったが、すぐに声を掛けた。

「おい、とにかく大丈夫だからな。俺もよく失敗するし。落ち込む気持ちもよくわかる。辛いよな。こういう時、なんて声を掛けてあげればいいのか俺もよくわからないけど、とにかく新井の気持ちはよくわかるよ。

仕方ないよ、うん。落ち込むよな、わかる。気にすんなと言われたところでどうしても気にしてしまう。わかるよ」

ところが新井はそっけなく答えた。
「あぁ、大丈夫。もう気にしていないから」

「そうそう、気にしなくていい…えっ?!」
新井の思いがけない言葉に倉山はまたあっけに取られてしまった。

「気にしてないだって?いいんだよ。意地張らなくたって。気にしてしまうことは十分俺もわかっているから。こういう時は無理に虚勢を張らなくていい。励まされる方が得意だけど、励ますことも出来るんだぜ?」

倉山はまた話し始めたが、またも新井の返答はそっけないものだった。

「だからもう気にしていないって」

新井があまりにけろっとしているので、拍子抜けした倉山は思わず質問をした。

「どうして君は落ち込んでいないんだい?」

「いや、もう十分落ち込んだよ。ただ落ち込むのなんて、ほんの数分くらい、長くても二、三時間だよ。今回は三時間くらい落ち込んでたからだいぶ長かったな」

倉山には信じられない言葉だった。

「そんなのは落ち込んだなんて言わないよ。俺なんて一度落ち込んでしまったら、取り戻すのに結構時間がかかるよ。

いったいどうやってそんな短時間で克服しているんだい?」

「克服というよりかは気にしていないと言った方が強いかな。ほらさっきから気にしていないと言っているだろ?」

「気にしていない?だって、さっき落ち込むと言ったじゃないか?」

「そう、落ち込みはする。ただ、そのことを考え続けはしない。ってことだよ。だって、いつまでもくよくよしていても、起きてしまったことは変わらないからね。

それよりもそのことに対してどう思うかの方が大事だと思わないか?そっちの方が変えることができるからね。

僕はひとしきり落ち込んだ後はどうしたら、再発しないようにするかとそういうことしか考えていないよ。

だから、僕は気にしない」

倉山は励ましに来たのだが、反対に教訓を学んだ。

いつも共感して一緒に励ましあってくれた仲間のアドバイスはなんの役にも立っていなかったことを悟ったのだ。

わかると言って、共感して同情して傷の舐め合いをしたところで問題は何も解決しない。大切なことは終わったことを気にするのではなくて、気にしないことだったのである。

起きてしまったことにくよくよするのはやめよう。起きてしまったことは変えられないのだ。どう思うのかだけが変えることができる。これで良かったと思い切ること。これが問題に負けないコツだ。

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