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ぶっ飛び経営者【2】新たな道すじとの出会い

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そのインタビュー初日。緊張を隠しきれないまま小金井は初めての訪問先へと向かった。

今までとは違う顧客を相手にする。その相手はソーシャルネットワークなどの情報もなく、企業サイトも更新がままならない。
いわゆる怪しさが残るスタートアップ・経営者だ。他からは軒並み無視される中、この転職マッチングサイトを運営する経営者からは意外にも「はい、よろこんで」という返信が来たのである。

待ち合わせ場所に到着したときもこの経営者は本当にくるのだろうか?と疑いの心は晴れなかった。が、それはすぐに解消された。その経営者の方が先にきていたからだ。

それに驚いたことにその経営者は小金井よりも一回り以上年が下の若き青年であった。名は中城 守(なかじょう まもる)という。二人は簡単な挨拶を済ませると近くのカフェに立ち入り、インタビューの準備を進めた。

小金井がこのインタビューで聞きたかったことはこの顧客が現状で抱える困っていることに関する悩みだ。その悩みを聞き出しつつ、サービス導入提案をできればなお良い。早速小金井はインタビューを開始した。

「現在抱えている悩みを教えてください」

「ご存知かと思われますが、我が社は人手が足りない状況でして、多くのことで業務に支障をきたしております。それはもう営業からサイト構築、資金集め。サービスの方は外注でうまく回せているのですが、それ以外のこととなると手が回らないのですよ」

やはり、ディレクターの予想していた通りだった。こういったオーナーにはPR外注の需要がある。そこで小金井はこう質問した。

「もし、PR活動を外注できるサービスがあればどうです?頼みたいと思いますか?」

「ええ、それはもちろん。そんなサービスがあれば嬉しいですね」

その後もインタビューは続き、経営者の考えていること、今行っていること、将来のビジョン、夢などを大いに語ってもらった。これがまた小金井にとってすごく刺激的な話であった。

「この話を僕の友達に話すと笑われるので、あまりおおっぴらには言いたくないのですが」
中城はそう断りを入れてから恥ずかしそうに話し出した。

「僕は世界を変えようと思っていて、日本国内にシリコンバレーみたいなものを作りたいと思ってるんです。それで、起業家が集まれるクルーザーでも作ろうと思って、本気で見積もりを取ったんです。そしたらいくらしたと思います?」

「5千万くらいでしょうか?」
小金井は見当もつかずに回答した。

「僕もそれくらいかなって思ったんです。でもそれが、80億ですよ。本当に欲しかっただけにちょっとびっくりしちゃって。さすがに今すぐには買えないなって」

小金井には夢のまた夢の話でただあっけにとられていたが、中城は本気で落ち込んだ様子を見せていた。その様子に小金井は思わず笑みをこぼした。

「やっぱりおかしいですよね?みんな笑うんです。でも、僕は本気で考えているんですけどね」

中城は苦笑いを見せた。小金井はとっさに言葉を口に出す。

「いやいや、失礼いたしました。そういった意味で笑みを浮かべたわけではなくて……。純粋に人として面白い、ご興味を惹かれる方だなと思って笑みがこぼれてしまいました。私にはそんな特別なことを考える面白さを持ち合わせていませんから…。

正直羨ましいです。あっいや、失礼しました。とっても勉強になりました。こんなに面白い方にお会いできるとは思ってもいませんでしたよ」

「そうですか」
中城はハッと顔を見上げ、続けてこう言った。

「よかったら、僕の経営者仲間にもインタビューしてください。皆面白い連中ばかりですから面白いですよ。ご紹介します」

この調子でインタビューは和やかに続き、無事終了した。

その帰り道。小金井はとても心が弾む想いに満たされていた。
先ほどのインタビューを何度も振り返っては一人笑みを浮かべ、この日の出会いに感謝した。途中、会話が弾み小金井の経歴のことに触れられたが、その経歴がとても面白いと褒められたことにも驚いた。小金井は自分の想像の世界がどれだけ狭いかを確信して、社へと戻る。

すぐさまディレクターが駆け寄り話を聞いてきた。

「怪しさ満点のサービスでしたが、経営者には会えましたか?」

「ええ、それがウェブ上では分からなかったのですが、とても面白い方でした!他の経営者もご紹介いただけるようです。それに、PRの方も需要がありそうな予感がしますね」

「それはよかった!では、引き続き調査をお願いいたします」

その後も引き続きインタビューを続けたが、中城のような人は珍しく、それ以降巡り合うことはなかった。

アポイントの取れた個人事業主をちょうど十軒調査し終えた頃。
一人でインタビューを行うこと、文字起こし、フィードバック、アポイント、新たな訪問先の調査。

これらの業務に小金井は心身ともに疲労を感じていた。やりがいや楽しさはある。だが、それにかかる重圧も大きいことにプラスしての作業量だ。疲弊してしまうのも無理はない。

少し休息が欲しい。そう思っていた頃だった。その時、小金井のPCにメールが入る。中城からだ。開くと経営者仲間に話をして了承を得たので、連絡を取ってみてくださいとのことだ。メールには彼らの企業サイトがずらりと並んでいる。小金井は早速一番上の人からアポイントを取り始めた。

類は友を呼ぶという言葉をこの時ほど思い知らされたことはない。
中城が紹介してくれた人はどの方も面白く、また普通ではない思考を持ち合わせていた人ばかりであったのだ。インタビューが済むとその経営者と同様に今までの経歴や将来のビジョンなどを自由に語ってもらった。これが実に面白かった。

はじめにインタビューを行なった経営者は中城同様、若き青年であったのにも関わらず、もうすでに会社を十社溶かしたと『笑って』話していた。最後に成功するプロセスに過ぎないから溶けたことなどつゆほども感じないと言う。

次に会った人は三十年どっぷり脚本の世界に浸かった人で、自分の専門的な脚本の話をものすごく楽しそうに永遠と語り出し、無料でここまで聞いてもいいのかと言うくらい深い話をし続けた。その顔はまるで子供のようで、飽きることなどないのだろうなと思わせる人物であった。

またその次に会った人は、中城と同様、一千億稼いで島をまるごと買いたいと言い出した。そこから世界を変える発明をバンバン生み出して、世の中を良くして行きたいのだと言う。

その次の人は会社を四社経営していて、会社経営が楽しくてやりたいことが日々増えていって気がついたら、四社になっていたとか言い出し、今五社目を企画中なんだと言い出した。

その次に会った人はフリーランスとして各社を飛び回り、現在十足のわらじを履いているという。その次の人は…。

そして、どういうわけか小金井はこの経営者連中に好かれた。どうも経歴が面白いのだという。

中城も同様のことを言っていたが、面白い経歴など持ち合わせているのだろうか。このことを相談するとこぞって経営者たちはその経歴を活かして、私たちのように経営を行うと良いとアドバイスを授けた。なんでも

「君の経験は他の人にはない特別なものなのだから」

という。

小金井は中城と巡り合った時同様、心にウキウキとした想いを抱いていた。世の中にはこんなにも面白い人たちがいたのかと心がときめく想いだった。常人とは思えない人と知り合えたことに夢中になり気が付けば、楽しさに癒されていた。

それから小金井は調査の合間を見て、自分の経歴を掘り起こしてみた。自分の面白さとはどういったところにあるのだろうか。あの経営者たちに比べれば自分なんて大したことのないように思える。

小金井がこれまで経験してきた職種を経歴の古い順に辿れば、自動車整備士、パチンコ業界の法人営業、ECショップの運営、メルマガ発行・代行、スポーツインストラクター、工場作業員、外構工事作業員、システムエンジニア、カウンセラー、専属ライターと経験してきたのちフリーのライターとして独立した。

言われてみれば確かに、業種も違えば、職種もほぼすべて異なる。頭を使う仕事もしてきたし、体を使う仕事もした。

独立・起業、専門的な職種。その経歴は多岐にわたる。これらの経験をもとにキャリアコンサルタント、独立コンサルタントとして、手を広げてみるのも面白いかもしれない。今まで失敗ばかりしてきたから、それを売りにしていこうではないか。

小金井は先の経営者たちから教えられたことに習って、その失敗歴を表に出して売り込む案を考え始めた。ただ、問題があるとすればそれらを表に出すということは人と違うことをやり、目立つという点である…。

小金井はこれ以上、考えを先に進めることはできそうにもなかった。

インタビューも順調に進み、市場の求めているものも明確になった頃であった。

ぶっ飛び経営者3へ続く

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