1. 心の在り方
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失敗を落ち込む必要は1ミリもない

「いいか、お前らよく聞け。リーダーにとって必要なことは他人のために自己犠牲を払うことである」

小澤涼平は会議室に同僚や後輩を集め、熱弁をふるっている。次のプロジェクトの会議でもしているのだろう。場は大賑わいを示している。突然、あるものが声を張り上げた。

「おい!」

その場にいる全員が声を張り上げたものの方を見た。

「それは俺がこの間、言った言葉じゃねぇか!あたかも自分が初めて言いましたみたいな言い方しやがって。盗品だ!」

坂下がそういうと会議室に爆笑の渦が巻き起こった。

「ははは、バレた??」

小澤がおちゃらけた表情で笑いを誘うとまたしても会議室内は笑いに包まれた。

小澤は社内一おふざけの達人だ。笑いのセンスを置いて、小澤の右に出るものはいない。小澤がいればうまくまとまる。ことはないが、小澤がいれば会議はいつも和やかなまま終わる。どこか憎めないやつで、底抜けに明るいその性格から皆に愛されている。この時も場が和やかになり、無事滞りなく会議が終了した。

会議が終わると、坂下から次のプロジェクトのリーダーをやらないかと声を掛けられた。君ならきっとうまく行く。うちの上司にも掛け合ってみるからさ。と言う。

「えっ?俺が?出来るわけないな〜い。そんな柄でもないし、第一そんな小柄でもない。いや、大柄でもないんだけど。えっ?」

また、いつものようにおふざけしてその場をやり過ごす。いやいや、冗談じゃなくって本気だってば!という坂下をからかうように変な動きをして、場を立ち去ろうとした。

とにかく掛け合うから覚悟しておいてな!と言ってきたが、また変な動きをするだけであった。

次の会議の時、坂下は懲りずに小澤を誘い出した。ところが、小澤はまたふざけてばかりでまともに取り合おうとしなかった。あまりにまともに取り合わないので、坂下がしびれを切らせ、なぜやりたくないのか聞いた。

「俺はさ、新しいことをやるのが苦手なんだよね。変化が好きじゃないっていうかさ、現状でいることが一番落ち着くんだ。だから、チャレンジはしなくて良いの。リーダーってやったことないし。自分の性格にも合わないしね〜ん」

それこそ、チャンスじゃん。やったことないのならやるべきだよと坂下は語るが、そういうのは他の人、ユズルに譲るよ。えっ?ユズルなんていないっけ?といつものようにおちゃらけた。

坂下には悪いが、俺はリーダーにはなりたくないのだ。そう思っていた矢先、今度は坂下の上司が直々に小澤の元に訪れた。

「社としても能力のあるものにどんどんスキルを学んでもらいたい。どうだね?ここは私からのお願いを一つ頼まれてくれないか?」

何を言われても私には出来ません。と頑なに拒んでいたが、そう易々と折れてくれる上司ではなかった。話し合いは長い間行われ、ついに小澤が折れた。次回のプロジェクトリーダーは小澤が指揮をとる。

小澤はもう、どんよりとしていた。それほど嫌だったのだろう。近くに坂下がいたことも忘れ、珍しく落ち込んだ素ぶりを見せてしまった。

その様子を見た坂下が心配そうに駆け寄ってきた。大丈夫だって、何かあったら俺も手助けするからさ。といつもは励ます側の小澤がこの時ばかりはすっかり励まされていた。

かくして、新プロジェクトは小澤リーダーの元、動き始めた。小澤はいつものちゃらけた雰囲気で場を和ませながら、リーダーとしての役割を果たし続けていた。プロジェクトも滞りなく進み、終盤に差し掛かった頃、ある問題が起きた。

発注漏れを起こしてしまったのだ。注文していたものがいつまで経っても到着しないので、不思議に思った小澤が確認を行ったところ発注されていないことが発覚した。それは誰のせいでもなかったが、確認を怠ってしまったリーダー小澤の責任である。ミスの起こらない仕組みを作るのもリーダーの務めなのだ。

幸い、ギリギリのところで発見することができたのでプロジェクトに支障はきたさなかったが、あと一日発見が遅れれば、大幅な納期遅れになるところであった。

それにもかかわらず、周りの人は軽い調子で声をかけてくる。どんまいどんまい。大事にならなくてよかったじゃないか。優しい言葉をかけてくれるのも小澤のいつもの性格のおかげなのだろう。小澤も軽い調子で危なかったよ〜とその場は誤魔化してみせた。

だが、周りに人がいなくなるのを確認するとその場にしゃがみ込み、地面に向かってぶつぶつとつぶやき始めた。

蓋を開けてみると小澤は誰よりも落ち込みやすい性格だったのだ。

「はぁ。失敗してしまった。これだから新しいことに挑戦するのは嫌なんだ。あぁ、みんなから嫌われていないだろうか」

小澤はすっかりと意気消沈し、一人落ち込んでいた。
と、そこへまたも坂下が姿を現した。

小澤は慌てて、今のは落ち込んだフリを練習していただけだ。ほらみんなをびっくりさせてやろうと思って。と言い訳を並べてその場を誤魔化そうとしたが、誤魔化し切ることができなかった。

「やっぱお前でも落ち込む時は落ち込むんだな」

坂下がそう話し始めると観念した様に小澤も話し始めた。

「そうなんだよ。驚いたよな?実はさ、俺こうみえてすごく落ち込みやすいんだよ。だから、新しいことにあまりチャレンジしたくなくてさ。新しいことやると失敗することも多いだろう?そのあと、こうなるのが嫌なんだよ。今回のでもうこりごりな」

とにかくこんなのはキャラじゃないからさ、くれぐれもみんなには黙っておいてくれよな。そう言い残し、どこかへ行こうとする小澤を呼び止める様に坂下が話し始めた。

「実はさ、お前が落ち込みやすいやつだということはなんとなくわかっていたんだ。この間、このプロジェクトが始まる時、すごく辛そうな顔してたのを見たからな」

あっ、そういえば!
小澤は以前、坂下に励まされたことを思い出していた。

「だから、もしかしたらと思ってみんながいなくなるのを影から見てたんだ。そしたら、案の定ってわけさ」

小澤は内心こいつもなかなか性格が悪いなと思っていた。
その直後になかなか性格が悪いだろ?などと言い出すものだから、思わず吹き出しそうになってしまった。

「お前が新しいことにチャレンジしたくない気持ちはよくわかった。だが、お前の考えは間違っているぞ。失敗なんてのは悪いことでも落ち込まなきゃいけないことでもなんでもないんだ。むしろ失敗はラッキーなんだ。そのことが全くわかっておらん」

こいつ気でも狂ったのかと思ったが、小澤は黙って話を聞くことにした。

「いいか、よく聞け。失敗はな、確かに精神的なダメージは大きいかもしれん。だがな、失敗をするということは成功することよりもたくさんの教訓を得ることができるんだ。成功した時というのは何がきっかけで成功したのかが見えにくい。一方の失敗というのは原因を探れば比較的すぐわかる。ここが重要なんだ。一度失敗の原因がわかれば、二度と同じ失敗を繰り返さなくて済む。

そう思える様になれば、失敗はラッキーなのだよ。むしろ、今このタイミングで失敗出来てよかったとすら思える。失敗はとても良いことなのだ。何も落ち込むところはないと思わないか?」

言われてみれば坂下の言うとおりであった。確かに失敗は原因がはっきりとわかりやすい。次にこれをやらない様にしようと思えば良いだけだと思える様になると、落ち込む必要はないことが小澤にもわかってきた。

すると、さっきまであんなに落ち込んでいたのが嘘のように気にならなくなった。
もう落ち込む必要は何一つないのだ。気持ちがすっきりとしてきたところで、小澤にまたいつもの調子が戻ってきた。

「お前さ、さっきもうこりごりとか言ってたけど、ごりごりやってやんよの間違いだろ?」
坂下がふざけた調子で肩を組んできた。
「はぁ?誰がゴリラやってますだよ!こちとら好きでゴリラやってるわけじゃねえんだよ!もうゴリラでもなんでもやってやんよ!」
ゴリラとか一言も言ってねぇと坂下は思ったが、いつもの調子に戻ったことを喜んでいた。

また次のプロジェクトでリーダーになった時、小澤は後輩たちに向かってこう言った。
「いいか、よく聞け。失敗はな、確かに精神的なダメージは大きいかもしれん。だがな、失敗をするということは成功することよりもたくさんの教訓を得ることができるんだ」

今度はくすくす笑いを堪えるだけで、坂下は何も言わなかった。

失敗と聞くとネガティブなイメージを思い浮かべる人も多くいることだろう。失敗は嫌なことだと。しかし、私はそうは思わない。失敗は多くの教訓を含んだチャンスなのだ。

失敗出来たことを喜ぼう。今失敗しておけばもう二度と失敗しなくて済む。このタイミングで失敗出来てよかった。と失敗出来たことを喜ぶのだ。失敗することができたからこそ次に進める。早い段階で失敗したからこそ気が付ける。

それに失敗には学べる点が多い。してはならないことを学ぶことはやらなくてはならないことを学ぶのと同じくらい大切なのだ。失敗には原因が明確にわかる。だから、学びになるのだ。

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