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とんでもなくかわいいヒロインの描く切ないストーリー『君の膵臓をたべたい』作家の目レビュー

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物語は現代の僕が高校生だったころに出会った、山内桜良とのとても切ない青春を、聞き手である図書委員に話していくという形式で進められていく。

「君の膵臓をたべたい」という衝撃的なタイトルにホラーものなのか?と思ってしまう方も多くいるかと思うが、そんなことはない。
複数の意味が込められた本作品を表す重要なテーマを象徴するタイトルだ。

ぼくも話題に上がってからタイトルを見て、毛嫌いしていたがはっきり言って観てよかった。
多くのブログで取り上げられているのでご存じかもしれないが、本作品の面白さのポイントはまさにキャスト選びにある。

それぞれのキャストが演じるキャラクターとのマッチが非常に良い。
高校時代と12年後の現在を行き来するのだが、名前を呼ぶという説明が入らなくてもこのキャラクターはあの子でしょ?!というのが、見るだけで分かるのだ。

そもそもキミスイでは、登場人物の名前が明かされるシーンが少ない。
主人公は桜良に対し「君」と呼び、桜良自身も主人公のことを「君」と呼ぶ関係にある。
主人公の名前を桜良は本当はなんと呼びたかったかは最後に出てくるが、作中のほとんどは君で統一されている。

お互いが君と呼び合う関係がまたタイトルにある「君の膵臓をたべたい」の意味を色濃く反映してくれるのだ。

本編は僕が盲腸の手術後の抜糸をするために訪れていた病院内で、ある日記を拾うところから物語が動き始める。
共病文庫と書かれた日記を開くと、そこには膵臓の病気であること。余命が幾ばくも無いことが書かれている。
と、そこまで読み進めた時、背後から山内桜良が僕に声をかけてくる。

「それ、私の」

クラスの人気者であった桜良。彼女のキャラクター、これがまた抜群に良い!
主人公の僕は人とかかわることが嫌いで、完全根暗というキャラであるのに対し、桜良は正反対の明るさを持ち合わせている。
このキャラクターが何とも愛くるしくかわいさを発揮してくれる。病気でこれから死んでしまうことを微塵も感じさせない明るさが見る者の心をつかむ。

人とかかわりを持つことを嫌う僕に友達を作らせようとする様、自身を持ち合わせていない僕を勇気づける様など、そのやりとりすべてがかわいくてたまらない。
最大の魅力は山内桜良を演じる浜辺美波の笑顔にあるのかもしれない。はにかんだ時に見える八重歯がとにかくかわいい。

だからこそ、この後桜良はどこかで亡くなってしまうのかと思うて、非常に切なくなる。
作品の中盤ではなく、冒頭で病気のことを見せているのが非常にうまいのだ。

初めのうちは振り回されるだけの僕であったが、桜良とともに時間を過ごしていくことで、次第に二人の関係は近づいていき、僕は心を開いていく。
物語の前半では一切笑わない僕が後半になるにつれて笑うシーンや、何かと困った時に助けてくれているガム君(必ずシーンの終わりに「ガム、いる?」と聞いてくる)から最後にはガムを受け取るシーンは、思わずふふっと笑みを浮かべたくなる。

そして、もう一つ。本作品を面白くさせているのが、セリフの面白さであろう。

桜良「昔の人はどこか悪いところがあると他の動物のその部分を食べたんだって」
僕「肝臓が悪かったら肝臓を。胃が悪かったら胃をって?」
桜良「そしたら、病気が治るって言われていたらしいよ。だから、私も…」
僕「膵臓を食べたいって。ばかばかしい」
桜良「直球できたねー!」

このセリフを僕はとても冷めた感じで。桜良は無邪気な感じで言い合うのが、くすぶるのである。
笑顔を見せながら、「直球できたねー!」は正直かわいい。

二人で旅行に行くシーンでのセリフも面白い。僕と桜良は帰り際、「また旅行行きたいね。今度は夏だね」と楽しそうに話している。桜良は僕の膵臓あたりをツンとしてはしゃぐ。

僕「僕の膵臓食べようとしてる?」
桜良「私が死んだら、膵臓食べていいよ」
僕「なんで?」
桜良「膵臓を食べられるとその人の中に残るんだって」
桜良「私はみんなの中に残り続けたいの」

二人は沈黙したままシーンが切り替わる。
この沈黙が非常に切なさを演出しているのだ。

後半がとっても切ない

物語も終盤に差し掛かり、桜良は入院してしまう。
きっと見ている人誰もが別れのシーンを想定することだろう。

ああ、いよいよこの時がきてしまうのか……
しかし、意外なことで僕と桜良はその時を迎えてしまう。

「明日退院できるって」

僕の元に一通のメールが届き、僕はすぐさま

「じゃあ、桜を見に行こうよ!」

と退院出来たら満開の桜を見にいくという約束を果たそうと計画を立てる。
桜良は着替えるために一時家に帰り、用事があるからと思い出の図書館に寄ってから僕の元へ向かう。無邪気に映し出される桜良を見て、鑑賞者はそろそろ涙腺の弱まってくる頃だろう。

しかし桜良は僕の元には現れない。
何かあったのか?

突然、スクリーンに映し出される通り魔事件。
なんとその被害者が桜良であった。

我々の予想を裏切る別れのシーンにここで泣きたかったのに、これじゃ泣けない!と思うた方もいるのではないかと思う。それくらい拍子抜けしてしまう最後を迎える。

なんとも納得のいかない終わり方をしてしまうのだが、作者があえてこの展開を選んだのだろうというのがよくわかる。セカチューのようなお涙頂戴王道パターンに落とし込みたくなかったのではないかということも推測できる。

そして何より、幸せそうにしていただろう今後の二人のストーリーを思う存分想像してしまっていたからこそ、そうならなかったことが最高に切ない。

この切なさを描くためにこのラストを選んだのではないかと思う。
納得はいかない。だからこそ、切ない。

物語は最終シーンへと進んでいくが、僕が桜良を失い立ち直った時、初めて共病文庫を読むというシーンの見せ方がとてもうまい。

桜良は僕の前ではいつも明るく見せていたが、裏ではどうなっていたかという映像が映し出される。実は驚いていたこと、僕に興味を持っていたこと、病気が辛かったこと、怖かったこと。

真実を知り、最後に僕と会うことを楽しみにしていたことがわかる。
もうこれが最後。なのに通り魔によって……とても切ない。

本作品のクライマックスはここだろう。

回想も終わり、12年後の僕は解体される図書室の中である一通の手紙を発見する。
この内容がまたとてもうまいのだ。

この手紙を読むことで「君の膵臓をたべたい」が完結するのである。
詳しくは作品を見てぜひ楽しんでもらいたい。

タイトルで毛嫌いしていたが、観てよかったなと思う内容であった。

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