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華麗な伏線を見せつつ、最後に巻き起こす圧巻の大どんでん返し『戦慄の楽譜(せんりつのフルスコア)』作家の目レビュー

劇場版コナンシリーズ第12作目となる『戦慄の楽譜(せんりつのフルスコア)』は音をテーマにしたストーリーだ。

キャッチコピーに「この歌声を、消させはしない」「この指が奏でるのは、真実を導く旋律(しらべ)…」とあるように終始、音をうまく使ったミステリーが展開されていく。

コナン君の面白い点はオープニングから一貫してテーマとなるものが表れ続けること、そしてそれがのちのクライマックスでつながりを得ているところだろう。
どのシーンにも無駄がなく、すべてにつながりがあるというのが非常に見やすく面白い。

さらに言うと、最終シーンにつなげるための細かな事件同士のつじつま合わせにも注目していきたい。
無理やり付けたという感じではなく、整合性があるのがなおのこと素晴らしい。

では、さっそく中身に入っていくとしよう。

コナン(新一)は音痴であるという描写がミスリードを誘う!

冒頭や話の中盤でこのことに関する話題が何度も出てくることで、観客はコナンは音楽に関して素人同然ともいえるのだろう。と勝手に思い込む。これが絶妙にうまい。

作中、絶対音感を持つ秋庭怜子がコナンたちの小学校で歌の練習を見るというシーンが出てくるのだが、コナンの歌う姿を見て、「あなた、わざとやってるの?」と痛烈なコメントを残すのもまた良い。

プロからこう言われれば、誰もが全く才能がないのだなと錯覚することだろう。
しかし、コナンは物語に登場する音の違和感に何度も反応をするのだ。

観客としては「あれ?コナンは音楽に関して無知なんだよね?」という思い込みがあるので、音がすべてのつながりを持っていることには気が付きにくい。

だが、実はコナンも絶対音感を持っているということが後半になって判明する。
観客にはその違和感を感じさせずに、さらりと音のトリックを見破るのだ。

しっかりと伏線を張っているにもかかわらず、主人公は才能がないかのように見せるテクニックは非常に面白い。

犯人と対峙し、ネタバラシをする際にも絶対音感がポイントであったことを語っている。
細かく見ていると見逃しそうなほど小さなヒントがいくつも出ているので、ネタバラシの時に観客が思い出す。というのがまた面白いのである。

「そういえば、あの人の発言はここにつながっていたんだ!」
「だから、犯人に狙われていたんだね」
「ちらっと出てきたこれが重要なポイントだったんだ!」

コナンは作中に出てくるトリックをしっかりと回収してくれるので、観ている人もすっきりして終われるというのが、醍醐味なのだろう。

また、絶対音感に関する描写はいくつもあるものの、わかりやすい表現を選んでいないというのも単純にさせないポイントだ。

最初の爆破事件の時、被害に巻き込まれた河辺奏子は被害にあう直前、怜子にこんなメールを送っている(目暮警部が事件のことを聞きに、怜子に問いただす)。

目暮「音の違いがわからない素人とは一緒にやれない」というメールはどういう意味だ?
怜子「そのままの意味じゃないの」

と答えを出さずに、かつ怜子がどのような性格の持ち主なのかを自然に紹介している点も非常に面白い。

他にも河辺は絶対音感であることのヒントを出し続け、

「空調の音が気になって眠れない」という一言を漏らしている。

そして物語の後半に近づいたところで、初めて点と点が結びつき、謎が解明されていくのである。

小道具をうまく活用して演出の幅をアップ

小道具をうまく活用することで説明を省くことができたり、つじつま合わせにも、創作の幅を広げていくことにも役立てることが可能だ。
コナンでも物語を進める時、必ずと言っていいほどに小道具が登場する。

怜子が初めて登場するシーンでは、目暮警部からの事情聴取を受けている最中にもかかわらず、自前のお茶を飲むシーンがある。
元太はそれを見て「俺にも飲ませてくれ~」と申し出るが、怜子は断固として飲ませない。

このやりとりだけで、怜子が人を寄せ付けない人物であることを表すことが出来ている。
さらに実はこのやりとりがのちの伏線になっていて、事件を引き起こすきっかけとなっている。そして、面白いことにそれがきっかけでクライマックスシーンの解決策へとつながりがあるのだ。

キャラクターの特徴を描くだけでなく事件のきっかけ、さらには解決策までつながりがあると観客は面白いと感じることだろう。

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オープニングの爆破事件では、爆破されたピアノの一部を複雑な表情で拾うシーン。
被害者の現場付近で必ずフルートのパーツが置かれているシーンがあり、その後の事件への関連性をにおわせる。

小道具をうまく活用していると非常に面白い。

対立している二人が協力して犯人逮捕につながる

怜子は登場から一貫してサバサバした性格で周りを寄せ付けないキャラクターだ。
犯人から狙われているにも関わらずに一人で行動しようとする。人に言わずコンサートを決行を優先するというなんとも恐れ知らずの人物で描かれている。

対立らしい対立というわけではないが、一人で解決しようとする怜子とそうさせまいと一緒にいようとするコナンが本作品の対立軸なのであろう。
初めは寄せ付けない怜子もコナンとともに行動するうち、次第に心を開いていく。
と、そのとき犯人にまたしても襲われ、コナンと怜子はボートに乗せられ、ダムに流されてしまうのだ。

コンサートに間に合わせることが出来ないというピンチを前にして二人は初めて協力関係を築く。
このことをきっかけに二人は協力して犯人逮捕までパートナーを組むようになるのだ。

人を寄せ付けなかった怜子と協力するからこそ、面白い展開が作れている。

クライマックスで迫りくるピンチの連続が心を動かす

コナンシリーズの特徴の一つでもあるが、クライマックスシーンに突入し、いざ解決!
というシーンになると、必ずといっていいほどすんなりと解決してくれない。

本作品でもコナンが犯人を追い詰め、ネタバラシをした後、コナンは窮地に追いやられる。
犯人はあらかじめセットしていたセンサー式の爆弾で会場を爆発させているが、手元にも起爆スイッチを持っているのだ。

そのため、ネタバラシをされても犯人は余裕で構えている。そこでコナンはさりげなく、麻酔銃をセットし眠らせることを考える。

さあ麻酔銃で犯人を眠らせて物語を終結させよう!というときに麻酔銃が壊れているハプニングが発生する。
一瞬驚き、すぐさまカットバックでコナンが犯人に襲われ殴られるシーンが映し出される。
頭を守るため、手でガードしているという描写が映し出され、その時に時計が壊れていたことを知る。

どうしようと考えるコナン。
しかし、策が浮かばないまま時間が過ぎ去っていく。

と、その時。別ルートから犯人を見つけ出した佐藤警部が狙撃をすることを考える。
だが、ここでも問題が起こる。
目標物と射撃範囲の間に、コナンが入り込んでしまっているため打つことが出来ないのである。

「コナンくん、早くそこをどいて」
と佐藤警部は構えたまま祈る。

コナンは気がつかず、タイムリミットが迫る。
観客もコナンもハラハラする時間帯だ。

そのことに気が付いた二人とは別の場所にいる灰原。
コナンにその場を移動するように指示しようとする。
怜子のお茶を飲んで、喉を痛めていた元太からリコーダーを奪い、咄嗟にある音色を奏でる(事件のきっかけから解決までの重要な小道具だ)。

その音階を使い、コナンだけに暗号メッセージを伝える。
コナンは暗号を解読し、咄嗟にその場から移動する。

そのチャンスを見逃すことなく、佐藤警部はピンポイントでリモコンを撃ち落とし、物語は問題解決へと向かう。

コナンが最も面白いのは事件を単純に解決させずに、クライマックスシーンでタイムリミット限界までうまく行かせないということだろう。
いわゆる大どんでん返しが幾重にも重ねられているので、最後までハラハラドキドキを保ったまま、結末を迎えることが出来る。

結末から逆算された伏線のひき方は感動すら覚える。
非常に面白い作品だ。

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