1. 心の在り方
  2. 12 view

ぶっ飛び経営者【1】大きなチャンスの前触れ

スポンサーリンク

いつも世界の中心は自分である、ということをアピールするかのように、大げさな動作をとり 、大声をあげる。注目されることはある種の快感なのだろうか、それとも人と違うことを行うことに快感を覚えるのか。

幼い頃の小金井少年は、奇行な動作を繰り返す、クラスの人気者を眺めてはそんな様子を羨ましく思い、また疎ましくも思っていた。

少年もある期間だけこの人気者に習い、授業中に突飛な行動に出たことがあった。特に理由なんてなかった。ただやってみたかったのだ。結果として、それは惨敗にも等しい惨敗であった。

先生には「あなたはそういうことをするのは似合わないからやめなさい」とこっぴどく怒られ、周りからは散々からかわれた。

女子には、卒業するまでの何年もの間クスクスと笑われることになるし、どういうわけかその突飛な行動は、噂になって他のクラスにまで飛び交うことになるし、そのおかげで、無責任な他クラスの連中からは「またやってくれよ」なんていつも笑われていた。

もともと注目されることなんて好きではなかったのに、何ということをしでかしてしまったのだろう。もう二度とこんなことはするまい。

そんな小金井 慎之介(こがねい しんのすけ)も大人になり、やがて独立した今でもこのことを強く思い出す。テレビやウェブでそういった連中を目にするたび、苦い思い出が鮮明に蘇るのだ。

だが、一方で小金井は親から言われることを従順に従うことができず、決められたレールから飛び出していきたいと思う気持ちを持ち合わせていた。小金井は勤め人になったが、型にはめられた業務を行うことに嫌気を指し、職を点々とした。

もちろん順応しようと努力はした。しかし、備えられた個性を殺しきれず、それらの経験と起業を十社ほど繰り返したのち、フリーのライターとして独立した。

フリーのライター、独立と聞けば聞こえは良いが、その生活はサラリーマンをしていた頃と対して代わりはない。今もビジフリーというPR制作会社に常駐して、他のライター仲間と働いている。自らの名前で仕事が取れるわけではなく、いつ仕事がなくなるかわからない状況にビクビクとしながら、必死に仕事に取り組んでいるのである。

独立したらもっと変わると思っていた。だが、現実は理想とは程遠い。
小金井は同じ社内で活躍するライター仲間の投稿記事を眺め、一人考えにふけっていた。

「よう!何面白い顔してんの?」

と、そこへ同じライター仲間の佐野 透(さの とおる)が声を掛けてきた。
小金井が隠すより早く佐野はパソコンを覗き込み、おもむろにこう言った。

「三上さんの記事面白いよね、俺にはとても書けないな」
小金井が眺めていたのは同社でトップの人気を誇る三上 直之(みかみ なおゆき)の記事で、サイト内ランキング一位の記事である。この記事は多くのシェアを巻き起こし、長い間に渡り一位をキープし続けている。

その面白さの秘密は三上自身にある。自身もコンテンツの一部として記事内に登場し、独自のセンスで多くの読者を魅了しているのだ。そのセンスは着想豊かに溢れかえっている。

この記事ではゲーム会社の新作発表に合わせて、主人公が扱う武器をダンボールで精密に作り、ノベルティグッズとして提供し、その過程を面白おかしく紹介している。その着想は誰にでも真似できるものではない。

「俺たちみたいな凡人はさ、下手にやったら痛い目見るだけだから普通に記事書いてるのが一番だよ。ああいうのはさ、クラスで目立って人気者だったやつにしか出来やしないってもんさ」

この言葉に小金井はまた嫌な思いを蒸し返した。

「いやいや、とてもじゃないけど俺には出来ないよ」
顔の前で手を振り、答える。

「まあ、小金井がやりたくなる気持ちもわからなくもないがな。なんせ、愛しの理絵ちゃんが三上さんの記事を楽しんで見ているもんな〜」

佐野の突拍子もない発言に小金井は慌てふためいた。

「お、おいっ!俺は別に黒田さんのこと何とも思ってないぞ。単なるビジネスパートナーじゃないか!」

小金井は咄嗟に言い返したが、怪しさは隠しきれない。

「ふ〜ん、そんなこと言ってのんびりしてると盗られちゃうぞ〜?言っとくけど、小金井が理絵ちゃんのこと見てんの、俺の席から丸見えだからな」

衝撃の事実に小金井が口をあんぐりと開けていると、佐野は「まっ、とにかく普通でいることが一番だよ」とだけ言い残し席に戻っていった。

小金井はしばらく記事を見続けていたが、三上の記事を閉じ、自分の作業に戻った。

その日の夕方。小金井はディレクターに呼ばれ、応接間に居た。
席に掛けるよう促され、席に着くとディレクターが話し始めた。

「小金井さん、実に言いにくいことなのですが、我が社も今ライバル会社との競争が熾烈を極めておりまして切迫した状況に追い込まれつつあります。それでですね…」

ディレクターのただならぬ表情に小金井は最悪の結末を想定し、息を呑んだ。この沈黙に胸の鼓動は勢いを増す。

「それで、今回社で新しいプロジェクトを立ち上げることになりまして、そのプロジェクトを小金井さんに勤めてもらいたいと思ってお声をかけました。ですが、申し訳ございません。まだパイロット企画のため、小金井さん一人でやっていただくことになります。いかがでしょうか?」

「えっ?……なぜ私なんです?」

ディレクターの言葉に小金井は思わず拍子抜けしてしまった。

「そうですね。すみません。まずはその説明からでしたね。今までは中小企業に特化して、PR活動の斡旋を行ってきましたが、昨今では競合も多く参入してきました。その市場で多くのライバルを迎え撃つことはもちろんのこと。

ですが、それと同時に眠っている新規市場の開拓も、視野に入れたいと思っております。今回我々が目を向けたのが、メディアに注目されていないスタートアップ企業やいわゆる個人事業主、零細企業と呼ばれる小企業のオーナー向けのPR斡旋サイト。ここに隠れた市場があると思っているのです。

そこで、白羽の矢が立ったのが、小金井さんというわけです。小金井さんの悩まれてきた経歴というのは、彼らの苦悩とも共感できるのではないかという仮説から選抜されています」

「そうでしたか。少し…考える時間をもらえますか?一人でやるとなるとそれなりの責任もありますし、正直自分にできるのかどうか…。今は不安なところもあります。私なんかがやって失敗したらと思うと、とても…」

「そのお気持ちはとてもよくわかります。ですが、時間もあまり取れませんので、出来ればこの場で決断してください。パイロット企画がうまくいけば、小金井さんにはそのまま編集長としてまとめ役についてもらいます」

小金井は限られた時間の中で考えを巡らせた。正直、ここまでおいしい話は早々にない。今までの無名ライターから名を売るチャンスでもある。しかし、そのようなポストを経験したこともない自分に果たして務まるのだろうか?

ここでやりますと言えば、今までよりも重圧がのしかかる。部下の育成に関してもやったことなどない。自分にできるだろうか?ただ、こんなチャンスはもうないかもしれない。しかし…

「小金井さん?」

ディレクターの言葉に小金井はハッと我に返った。

「どうです?できますか?もちろんこちらでフォローも致しますので」

それでも、不安が消し去られることはなかった。
しかし、このチャンスを逃す理由もない。

「や、やらせていただきます。」
意を決して小金井はディレクターに伝えた。

「ほっ、それはよかったです。ダメなら他の人にやってもらうところでした」

それからディレクターは小金井と新規プロジェクトのやり方を話し合い、共に仕組みを考えていった。調査も踏まえて、まずは無名スタートアップ企業のインタビューから開始しようということになった。はじめに顧客の抱えているニーズを探ろうと考えたのだ。

「では、小金井さんは直近でサービスを開始した無名スタートアップのピックアップとアポどりをお願いします」

小金井はすぐさま情報サイト・求人サイトを物色して片っ端からアポイントを取るメールを送った。

ぶっ飛び経営者2に続く

心の在り方の最近記事

  1. 家にいる時のルールと母の過ごし方。ラインスタンプを作った過去と気づかない才能

  2. リバウンドから4か月目突入!見た目で驚かれる辛さを乗り越え顔に変化が♪

  3. 会社に期待できない人がやれる逆説的突破術!

  4. 後から振り返って後悔しないために、冷静な判断が出来るようにする

  5. なぜ我々は納豆にタレをかけるのかがわかれば、サービスが加速する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


著書紹介


特集記事

作田勇次(ちゃみこ)の思っていること

PAGE TOP