1. コミュニケーション・関係構築
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今が選ぶべき一番のタイミング2

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「また怒られた」
私は事の経緯を夫に話した。すると夫は語気を強めてこう言った。

「なあ、それちょっとおかしいぞ!そいつ異常すぎるぞ!」
「そうなのかしら」
「新人の君にそんなに怒らないぞ。どう考えても普通じゃない!」
「そうなの?私がばかだから嫌気が指しているだけなんだと思っていたわ」
「まだ入ってたったの一ヶ月しか経っていないじゃないか。初めからおかしいとは思っていたが、そいつ性格悪すぎだろう」
「うん、そうなのかもしれない。他の先輩や先生に対してもこの人偉そうに話しているし、他の先輩も細かいところでよく嫌味を言われるって」

私がしょんぼりと話していると夫はまた語気を強めて話し出した。

「そんなところさっさと辞めちまえよ!いくらやりたかった仕事だとしても酷すぎる。別にそこにこだわる必要なんてなにもないんだからさっさと辞めるべきだね。時間の無駄だ」
「でも、保育園のこともあるし…」
「またすぐ次の病院探せばいい」
「そんなにすぐ見つかるかわからないから」
「じゃあ、今からでも探しながら働けばいいだろ!週に三回しか働いていないんだから充分時間があるだろ!」
「なんであなたが怒っているのよ」
「辛いのは私なんだから!」
「聞いているこっちの身にもなれ!それにそいつの話を聞いているだけでむしゃくしゃする!」

「おとーさん、おこってるのー?ねぇ、あそぼー!」
「お父さんは今遊ぶ気になれないからお母さんと遊んで!」
「えっ?!ちょっと!私も今からまた復習しなくちゃいけないのに!」

バタン!!私が言い終わる前に夫は自室にこもってしまった。

「おかーさんはやだー!!おとーさんがいいー!!!えーん!!おとーさーん!」
「お母さんだっていいでしょ!!じゃあもう遊ばないわよ!」

全くどうしたものかしら。夫の言うとおりあの人が異常で、性格が悪いのかしら。それともやっぱり私が出来ないからなの?転職を考えるって言ったってまだ一ヶ月しか働いていないのに、雇ってもらえるところなどあるのかしら。

それにそんなすぐ辞めるだなんてとても恥ずかしくて出来やしない。これじゃ本当に出来ない人みたいじゃない。それにそれに、周りからこいつはすぐに逃げ出すやつだなんて思われるだけじゃない!そんなのは嫌!

ただ一つ言えるのは、もっと勉強しなくちゃならないってこと。困ったわ。だってもう怒られたくないのに、今日もまともに進んでいないのだもの。はぁ。

次の日、仕事に行こうとすると朝から息子の調子がおかしかった。熱を測ると三十八度。鼻水は垂れているし、咳もしはじめている。これは今日はダメかもしれないな。ダメ元で保育園に預けると先生からは「様子みてダメそうならご連絡します」と一言。わかりましたと告げ、私はひとまず病院へ向かった。

「今日は息子の調子が悪いのでもしかしたら呼び出されるかもしれないです」と皆に告げると「ああ、いいよいいよ。まだ小さいうちはよくあるよね〜。無理しなくていいからね」と優しい言葉をかけてもらえた。私の指導をしている先輩はすごく不機嫌そうだったけどね。

この日も散々、この先輩から怒られ続けていた時、私の携帯がブルブルと震えた。どきりとする。もしかして。相手先を見ると…ああ、保育園だ。私は先輩に断りを入れて電話に出る。あちゃー、やっぱりダメだったか。この日は二時間近く仕事しただけで帰る羽目になってしまった。先生は「いいよいいよ、おつかれさーん」と優しく声をかけてくれたが、例の先輩からはまたも嫌味を言われた。

「あー最悪。ただでさえ遅れてんのに。ふざけてるわ。仕事の管理もできなければ、人の管理もできないんだな」

私は黙って帰るしかなかった。そんなに私ってできないのだろうか。きっとこれで何日も仕事に復帰できない。そう思うと風邪を引いてしまった子供が腹立たしく思えた。

「ねえ、私ってそんなにできないのかな?」
「はあ?」
「私だって努力しているし、精一杯頑張っているよね?!でも、頑張ってもできないことはできないのよ!なのに、なんでこんなに怒られなきゃいけないの!」
「だから言っているだろ。そんなとこさっさと辞めてこいって!」
「なんでそんなこと言うのよ!今辞めたら何も身に付かないじゃない!少しでも息子の保育費の足しにしようと頑張っているのに、息子のために頑張っているのにそんなこと言わないでよ!!」
「息子のため?!冗談はやめろよ。これのどこが息子のためだって言うんだい?」
「息子のためじゃない!どこがおかしいって言うのよ!!」
「ふざけたこと言ってんなよ!最近自分の様子がおかしいことに気がつかないのか?!」
「どこがおかしいのよ!あなたも馬鹿にしているって言うの!?」
「違うよ。よく聞くんだ。君は自分では自覚していないかもしれないけど、最近とても周りが見えなくなっている。息子に対して何か変わったことをしていないか気がついているか?」
「いつもと同じじゃない!」
「いや、全然違う。仕事をする前の君はもっと息子に対して優しかった。もっと会話もしていた。少しでも困ったことがあると過保護気味に息子のことを心配していた。たくさん抱きしめていた。いつでもたくさん遊んであげていた。しかし、今はなんだ。何一つやれていやしないじゃないか。それよりも息子のことを邪険に扱っている。今日だって、息子は保育園に行きはじめてからはじめて熱を出したんだぞ?それなのに、君ときたら息子のおかげで帰る羽目になったと言うような言い方じゃないか。これが息子のためだと言うのか?!

仕事か育児かどちらかに専念しろ!」
横目で息子を見ると苦しそうに咳き込んでいる。
「おかーさ…ごほっごほっ。いたいよー。えーんえーん…ごほっごほっごほっ!おねつー」

私は今まで一体何をしてきたのだろう。息子をこんな風にさせてまで働きたかったのだろうか。そうよ。言われてみたら、ここ最近息子のことをすごく冷たくあしらっていた。こんな状況になってまで、私は自分のことばかり考えていたのね。私、本当に大切なことをもう少しで失いかけるところだった。

「ごめんね。ごめんね」
私はボロボロと泣き崩れ息子を抱きしめた。
「いたいよー。おかーさー…ごほっごほっ。うえーん」
「大丈夫、大丈夫よ。お母さんがそばについていてあげるから」
「おかーさんないてるのー?だいじょうぶ?ごほっげほっ」
「お母さんは大丈夫よ。ごめんね、痛かったね。お熱辛いね。頭に冷たいのピタしようね」

息子の頭に冷却シートを貼るとすうすうと息を立てて寝始めた。

「あなたに言われるまで気がつかなかったわ。ごめんなさい」
「あぁ、それでどうするんだ?仕事か育児か」
「もう少し考えさせて」
「何言ってんだ!いつまで決断を先送りする気だ!決断をするなら今が最適なんだよ!今やらないでいつやるんだよ!」
「そうね、そのとおりね。わかったわ。今この場で決断する」

「私、育児と仕事を両立させるわ!」
「今話を聞いていたのか?それができないから今こうなっているのだろう」
「あなたは前にこう言ってた。何かを得たいのなら何かを捨てなさいと」
「ああそのとおりだ。だから…」
「だから、私はプライベートな時間を削るわ。そして、今決断をしたの!」

「私、明日から朝四時に起きて勉強するわ!」
「おいおい、そんなに頑張る必要ないだろう」

「ここで辞めたらなにも残らないもの。せめて身につくまでは頑張る。それでやっぱり合わないなら辞めるわ。大丈夫、きっとうまくやってみせる」

それから私は嫌味ったらしい先輩にも負けず、そして主婦としても家事・育児を上手くこなした。一年後。とうとう私はスキルを身につけ一人前となった。でも、やっぱりあの受付の人は異常だ。夫の言うとおりこれ以上ここでやり続ける理由はない。この日、私は夫に決意を伝えた。

「私、やっぱり辞めるわ。今日病院に言ってくる」
病院に着くと、私は先輩社員に辞めることを告げた。

「何よあんた!今まで私が教えてやったのに辞めるわけ?!最後まで役に立たないのね」
そんなことを言っていたが、もう私には関係ない。この人は本当に最後までかわいそうな人だった。

一人前になった今だからわかるけど、この人は周りのことを蹴落として、自分が優位に立っていないと落ち着いていられないタイプの人間だった。そうやって威張り散らして、新人を潰すことで悦を覚える小さな人。私が出来ないんじゃなくて、この人がそう思わせているだけだった。一度そう思えば、もうなんとも気にならないものだ。

先生や他の先輩にはしっかりと感謝の意を伝えて、退職した。とても気持ちが良い。自信にも繋がった。

帰宅してきた夫からこう言われた。
「で、次はどの病院にするの?」
「ええ、もう決まっているの。次は前からやりたいと思っていたパン屋さんよ!」

この物語からはいくつかの教訓が学べる。

まず第一に「何かを得たいと思うのなら、別の何かを捨てるということ」

どちらも手に入れようと思うのは少し都合が良い。何かの犠牲を払わずに、欲しいものだけ得ようとするのは諦めた方が賢明だ。

第二に「決断する時は今が最善の時である。遅すぎることはない。早すぎることもないということ」

決断を行うのはどんな時であれ、今が最善の時であるということを忘れてはならない。ナポレオン・ヒルはアンドリュー・カーネギーからビジネスの依頼をされた時、すぐに決断したことでとてつもないほどの成功を収めることが出来たという。その時、カーネギーは一分以内に君が返事をしなかったらこの話はなかったと言ったのだ。

明日何が起こるかなんてわからない。

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