1. 心の在り方
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臆するものとの戦い2

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「でも、僕には少し勇気が足りなそうだよ。わかっていても勇気が出せない。僕は君ほど勇敢でも、社交的でもないからさ」

「まあ、性格もあるもんな。得手不得手があるのは仕方ないよ。ただ、俺もいつも割って入れるわけでもないからな。いつかはガツンとやってやれよ」

「うん。ありがとう。努力してみる…」
そういう宗田の表情は暗かった。

その後も宗田は何度も怒声の餌食になっていた。相変わらずの様子に小平はまた宗田を挑発する。

「うじうじするなって。宗田は本当に弱虫なんだから。悔しかったら一度は言い返してみろ〜!」
やけに人を小馬鹿にした言い方に宗田はかちんときた。

「どうせ僕は弱虫で、なさけなくて、うじうじしているよ!君にはわからないだろうね!」

「そうそうその意気!やればできんじゃ〜ん!」
小平に反省の色は全くない。

「馬鹿にしないでよ!もうほっといて!!」

次に怒られた時、宗田は睨みつけるように上司を見た。
反撃の言葉を口に出そうとするもあと一歩のところで声が出ない。
すかさず上司からの反撃が飛び交う。何だその目は?!と強く言われ、宗田はすっかりと打ちのめされた。宗田は自分の情けなさに落ち込んでいた。

そんな時、金子に急な出張が入ったという知らせを聞いた。いつもは出張などないのに。ああ嫌な予感だ。頼りの綱がないというのは何と心細いことか。金子が主張中な時だけは平和でいてほしい。

だが、宗田がそう願うだけ無駄なことだった。

それは金子が出張に飛び立った次の日のことだった。宗田が外出先から帰社した時、オフィスからそれは激しい怒声を耳にした。廊下で話していた社員が事の経緯を宗田に伝えた。

聴くところによると井口は朝から猛烈な勢いで機嫌が悪かったらしい。宗田を呼び付けようと思ったが、朝から客先に直行していると伝えるとなぜか余計に腹を立てていたという。午後になっても帰ってこないことにとうとう痺れを切らし、一番近くにいた社員に近寄り、無理難題な資料の作成を仕上げるように命じたそうだ。

当然、無理な依頼に反論しようとしたが、井口はふっかけたっきり何処かへ行ってしまった。今になって戻り、資料が作成されていないことを知った井口はその社員に口答えの隙を与えず、怒声を浴びせ続けているのだという。話しかけてきたこの社員はいつも以上の怒声に堪え兼ね、悪いと思いながらオフィスを飛び出してきてしまったとのことだ。

今、君は入らない方がいいという忠告を聞き、立ち止まった。だがとてつもなく嫌な予感がした。ものすごく嫌な胸騒ぎ、とてもざわつく痛い感じだった。そして、その予感は現実となった。

宗田がオフィスのドアを開けると、そこにはいつもより激しく怒声を散らす井口と俯いている小平の姿があったのだ。とっさに宗田は心臓のあたりを掴む。

小平はぶるぶると震え顔が青くなっていた。宗田がオフィスに入ってきたことさえ気がつかない。井口は宗田の存在に気付き、ニヤリとしたり顔を見せ、さらなる怒声を浴びせる。

宗田は恐怖で足がすくみ上った。踏み出そうとする足がぶるぶると震える。しかし、そうしている合間にも小平の顔は青ざめていく。

その時、宗田は金子の言葉を思い出した

相手とは対等なんだ。何も怖くない。対等、対等。小声で呟き、一息整えてから宗田は一歩を踏み出した。

「なんだお前は?!お前には用はない、あっちに行ってろ!」

「い、いえ、い、行きません」

「ふん、金子のマネのつもりか?貴様ごとき、怖くも何ともないわ!!」

「だ、だからなんですか。同じ人間としてぼ、僕はあなたを許せません。こ、これはあまりにも酷すぎです」

「な、なんだぁ?!俺はお前に当たってもいいんだぞ!」

「あ、当たりたければどうぞご自由に。も、もう…もうあなたのことなんて少しも怖くありませんから」

「く、口答えしやがって。お、お前、ごとき俺の力をつ、使えばいくらでもつ、潰せるんだからな」

「どうぞ、やりたければご自由に。

ただ、今後このようなことがあれば、こちらとしても対策を取らせてもらうしかありませんね。このやり方は間違っているのではないかと社長に直々に掛け合ってみます」

「な、な、なんだ急に。し、証拠がなければ、だ、誰も信じはせんよ」

「今日外出した時、買ってきたんです。さっそく役に立ちました」

宗田は内ポケットからICレコーダーを出すとそれを上司に見せた。

「これを持って社長の元に行きます」

「ば、馬鹿な真似はよ、よひたまへ!」

「いえ、やめません」

「た、頼む〜。それだけはか、勘弁してくれ〜」

井口は人が変わったように怯え出した。これまでのパワハラがまるで嘘のようだ。

それからの井口は誰からも相手にされず、逆に皆の顔を伺うようにビクビクするようになった。

金子が出張から帰ると、この話を面白がって聞いた。

「な?大したことなかったろ?」

「うん、初めは何やってるんだって思ったけど、対等なんだって思ったらそこまで怖くはなかった」

「人はつい役職とか肩書きに縛られて萎縮しちまう。そんなのは飾りだよ。同じ人間なんだ。俺もあいつもお前もな。だから、対等に扱えばいいんだよ。もちろん敬語や礼儀は必要だけどな」

その数年後、宗田が部長に任命された。結局、ICレコーダーは提出しなかったが、あの事件がきっかけで井口は発言権を失い、立場を追いやられていた。そして、宗田が新しい部長に適任だとみなから持ち上げられ、就任することとなったのだ。

金子にも話が出ていたがこの話を辞退したらしい。
なんでも「俺は上に立つって柄ではないから。それに自由気ままな方がいいから」とのことだ。

さて…

「この度、部長に就任しました、宗田です。まず、皆さんに話しておきたいことがあります。それは人は皆同じ人間であり、対等であるということ。私はこの教訓を大切な人に教わりました。

役職に縛られることなく対等になって話をできる環境づくりに努めていきたいと思っております。

是非、みなさんにも対等であるという意識の元、この教訓を実践していただきたいと思っております」

役職者や有名人、肩書きを持つ人など自分より上の人と話すときには緊張や萎縮する気持ちを味わう。

だが、その状態でいればまともに話をするのもままならない。そうならないための方法は相手のことを常に対等だと思うことである。相手がいくら優れた人であろうと対等な人間なのだと思えば、萎縮しないで済むのだ。

私は今でもこの教訓を実践している。

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