1. 心の在り方
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臆するものとの戦い1

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人と話すことが怖い。あなたはそう思ったことはないだろうか?宗田 哲也(そうだ てつや)は対人スキルが乏しい人間で、自分でもそのことは自覚していた。

人と会話するだけでなぜか涙目になり、赤面し、目を合わせられず、手の震えも止まらなくなるほど、緊張するタイプなのである。人と話すことが怖い。特に何かをされたわけではないのだが、怖い。話し掛けられるだけでどうもビクビクとしてしまう。

その臆病な性格ゆえ、いつも人からからかわれていた。自分でもこんなことは望んでいない。ビクビクしないで済むのなら、そんな世界を全うしてみたいものである。

そんな調子だから宗田は社会人になっても当てもなく、目をつけられることが多かった。自分を変えたいと思うものの結果はいつも同じ。またいつものように的にされるのだ。みんなからの注目を想像するだけでも、嫌になるというのに実際にいつも現実に起こりうる有様だ。

この日も宗田は上司からは理不尽な怒声を浴びていた。宗田はというより社内にいる全員が知っていた。この上司からの怒声は理不尽極まりないことを。上司は自分の機嫌が悪くなると誰かに怒鳴り散らせてストレスを解消させているのだ。

そしてその対象に何も物言いをしない宗田が選ばれた。この怒声は永遠と鳴り響く。上司が満足するまで止むことはほとんどない。言い返そうにも、宗田の性格ではとても不可能なことは皆が周知していた。

ほとんどと言ったのは唯一言い返せる人間が一人だけいるからだ。宗田も含め、社内の皆はこの上司に怯えていた。言い返そうものならこちらに火の粉が飛びかねない。ただ一人、金子 純平(かねこ じゅんぺい)を除いて。この男が唯一上司に言い返せるのだ。

「井口さん(上司である)、もうそろそろ終わりにしてもらっていいですかね。こっちも仕事が仰山あるんですわ。それだけ怒鳴り声聞かされてたらこっちも集中できんのですわ」

「ぐっ、ま、またお前か…。お、お、お前には関係ないことだろう」

「関係ない?では、ここにいてもこれ以上仕事ができそうにもないので、今日は帰らせていただきます。では」

「そ、そんなことは、許されるわけ、ないだろう!」

「そんなこと言われましても、こちとら仕事ができないんでね。できないとなれば、いる必要ないんで」

「ちっ、宗田!何お前はいつまでもぼさっと突っ立てんだ!さっさと席に戻れ!」
「お、俺はこれから出掛けるからあとは各自しっかりと仕事をしとくように!」
そう言い切ると井口はそそくさと何処かへ行った。

「全く大した仕事なんてしてないくせにな。どうせバツが悪くなったもんだから逃げ帰っただけだぜあいつは。それにしても宗田、お前がだらしないからこうやっていつも目をつけられるんだよ。もっとシャキッとしろ、シャキッと。全く情けないんだから」
気分直しのためにコーヒーを買いに来た宗田に開口一番話しかけてきたのはもう一人の同僚小平 敦(こだいら あつし)であった。小平は人のことを小バカにしてくるひねくれた人だ。

「そうだよ、あんなやつ言い返しちまえばいいんだよ。何も怖くないぜ」金子が後から話に立ち入る。
「そ、それができたら、僕もこんなに苦労はしていないよ…」うじうじとした様子を見かねた小平が声を荒げる。
「あーもう!そういうしょぼくれたところが言われる原因なんだよ!ほんと宗田は情けないな!」
「まぁ、そうは言うなよ。小平まで宗田のことを責めちゃ救われないだろう」

「ふん!俺はどっちだって良いんだけどね。とにかく宗田のせいで仕事がはかどらなかったから俺は戻るよ!」小平はふくれっ面で宗田に目線を送っている。

「ご、ごめんね。いつも僕のせいで」

「ほんとだよ!しっかりしろよな!」

「おいおい、はかどらなかったのは宗田のせいじゃないだろう」
そんな金子の言うことは聞かず、小平はどたどたと音を立ててさっさと立ち去っていった。

「金子くんもごめん。金子くんも仕事がはかどらなかったよね。それに…それにいつも嫌な思いさせて…ごめん」

「気にすんなよ。別に嫌な思いなんてしてないしな。ああいうやつ嫌いなんだ、あのタヌキ野郎」

「えっ?今なんて?」

「気にすんな。独り言だ。それにしても、どうにかしなくちゃな」

「うん、でも昔からだから。僕、人と話すのが苦手でいつもこうなんだ。き、きっと伝わらないと思うけどさ…こ、怖いんだ。話すのが…目もうまく合わせられないし」

「俺もさ、昔は宗田と同じように人と話すのが怖かった頃があったんだ」

「金子くんが??」

「そう、あれは前にいた会社でプレゼンを任された時だ。俺は一般ユーザー向け講演会の司会を任された。俺は準備の段階で相当テンパってた。本番入りしたら、それはもうすごい緊張で、足もガクガク震えたよ。寸前まで逃げ出したい気持ちがいっぱいだった。だけど、やらなきゃいけない。でも、すごく怖い。そんな瀬戸際に立たされていた時、当時お世話になっていた先輩がこういった。

「なに、ビビることはない。相手もお前も同じ対等な人間なんだ。相手がすごい人なんて思わなくて良いんだからな」

俺は絶対に失敗してはいけないというプレッシャーとわざわざ足を運んでまで話を聞くくらいなのだから、この人たちはすごい人の集まりなんだろうって勝手に思い込んでいたんだ。それで余計に怖くなっていた。だが、この言葉を聞いて相手と対等だと思えるようになると怖さがなくなってきたんだよ。怖さを作り出しているのは自分だって。

だからな、宗田。怖いと感じたら相手と自分は同じ人間で対等なんだと思ってみろ。ビクビクしなくなるぞ」

「そうなんだ。だから、金子くんはいつもズケズケと言えるんだね」

「おいおい、ズケズケとは余計だろう」
宗田も金子も笑いあった。

臆するものとの戦い2へ続く

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