1. 心の在り方
  2. 8 view

年相応だと気にすることは1ミリもない2

真奈美は完全にやらかしたと思った。これは面倒なことになる。

「いやいやいや兄さん、これは違うのよ」
「何が違うんだ。人のことを上げるだけ上げて落とすのがそんなに楽しいか!」
「ちょっと待って、違うんだって」
「な、何も違くないよ。真奈美ちゃんはさっき楽しんでたもの」

「…」
自らが蒔いた種とは言え、真奈美はどう収拾をつけるか頭を抱えてしまった。そこである体験談を披露することにした。

「私が兄さんの店を訪れた後、初めて表彰されたことは覚えている?実はあれ兄さんからのアドバイスのおかげだったのよ。

あの時私はクライアントにある失敗を告白したの。そしたらね、正直に言ってくれて嬉しいと言われ、そのクライアントからも顧客に関するある失敗談を聞いたわ。それがとても面白くってそれを今度の企画に出しましょうよ!って私は言った。

そしたら、それが表彰される作品となってね。
あのとき兄さんが教えてくれた言葉が私を救ったの。問題から逃げないことがうまくやるコツだって。だから、兄さん話を聞いて。これからちゃんと真実を話すから」

達也も優もまだ納得はしていない様子だったが、達也はひとまず話を聞くことにした。

「で、さっきの話はどこまで本当なんだ?」
まだ少し興奮気味の達也が聞く。
「うん、まあほとんど事実だよ」
「なんだって!?じゃあ、やっぱりダメなんじゃないか」
横にいる真奈美を達也は凝視した。
「事実だけど、ダメだとは言っていない。それよりもやる価値は大いにあると思うわ。
まずね、成功っていうのは運の要素もあるから一概には言えない。兄さんもそうだったでしょ?」

「ああ、ライバル店が現れるかどうかというのもある種、運の要素はある」

「そうでしょ。でもね、これは先輩から聞いた話だけど、ノウハウというのはずっと残っていくものなのよ。兄さんの場合、美味しいコーヒーの淹れ方。豆の選び方。これらのノウハウは残っているわけでしょ?

これは自分自身が成功したかどうかってのは関係ないのよ。売れるか売れないかはまた別問題なの。それは抜きにして、ノウハウ、技術というのは人に教えられるはずよ。そういう意味ではアドバイザーとして立派にやっていくことができる」

「言われてみれば確かにそうだな」
「だから、別に自分は成功しなかったから人に教える資格なんてないなどという分相応感を気にする必要なんて全くないってこと」
「そういうことだったのか。それなら、教えても問題はなさそうだ」

「それに、人にはいろんな才能があるわ。いくらノウハウを知っていたとしても、プレイヤーとしてやることは極端に下手な人もいるし、プレイヤーとして超一流だからと言って人に教えることはうまいかといえば下手な人もいる。

スポンサーリンク

超一流プレイヤーが人に教えるのが下手だから、私はプレイヤーとしてやる資格がない。教えることに成功していないのに、自分でやる資格なんてないんだ!なんて言ってたら、そんなことないよって言ってあげるわよね?

それとおんなじ。たとえ、プレイヤーとして成功できていなくても、正しいノウハウを持っているのであれば、教えてあげればいいのよ。初歩的なことを知らない人も多くいるしね」

「人に教えるには成功が大前提だと思っていたが、必ずしもそうとは限らないのだな。私はプレイヤーとしての才能をあまり持ち合わせていなかったのかもしれないな」

「そんなに落ち込まないで。もう一つ、面白い話があるんだから。それはね、失敗談を売りにするってことよ!こうなったら成功するっていう話と同様に、こんなことをしていたら失敗するっていう話も同じくらい貴重なんだから。効果がないということがあらかじめわかっていれば、やらなくて済むでしょ?」

「ははは、それはそうだ。それは実に面白いね。この十二年間、ずっと自転車操業を続けてきた私なら、それらのノウハウはたくさん持っているよ」
達也に元気が戻ってきたようで真奈美はホッと一息ついた。

「私は今まで成功できなかったからという固定観念に縛られすぎていたのだな。真奈美にここまで言いくるめられるとはな。成長したもんだな」

「へへへー。やっとあの頃に貰った恩を返すことができてよかったわ」

「では、それらの点を踏まえて、これからはアドバイザーとしてのキャリアを積み上げていくのが良さそうだな」

と、そこへ突然、優が口を開いた。

「あっ…、じゃあ私もそれを目指す!」

いきなりの申し出に達也と真奈美は驚きを隠せなかった。

「どうしたの?いきなり」
真奈美はその訳を問いただした。

「私何も取り柄がないと思っていたし、控えめだし、暗いし。だけど、私の人生はこのままでいいのかなって思う時もあったの。そういうネガティブな私がこうなったらダメだっていうノウハウ本を出すのは面白いかもしれないよね。実は二人の話を前から聞いていて自分でも何かはやりたいなーって思っていたんだ。だからね!私も挑戦する!」

こうして達也は分相応感を払拭することが出来、また優も新たな道をスタートさせた。

その三年後、達也の初めての著書『失敗からの成功方式』はベストセラーとなり、達也は今、執筆に講演、オンラインサロン講座と成功を収めている。一方の優が執筆した著書『私みたいな超ネガティブ女子になるな』は大ベストセラーとなり、人気を博している。今では事務員を辞めて、売れっ子作家だ。

そして、この日はこの二人の対談を特集した大人気雑誌『フェイリア』が発売される。もちろん、編集長は真奈美だ。

自分なんかが大層な事をやってもよいのだろうか。まだ成功もしていないのに、人に何かを教えてもいいのだろうか。まだ自分にはスキルもそこまでないのに…。このように分相応を気にしてやりたいと思っている事を自らの手で閉ざしてはいないだろうか?もしそうであるなら、分相応という言葉は今この場で消し去ってしまおう。あなたが今これからやることで初めて成功することだってあるのだから。

心の在り方の最近記事

  1. 会社に期待できない人がやれる逆説的突破術!

  2. 後から振り返って後悔しないために、冷静な判断が出来るようにする

  3. なぜ我々は納豆にタレをかけるのかがわかれば、サービスが加速する

  4. いつもそこに【完】突き進む勇気の先に…

  5. いつもそこに【7】豹変した悪魔

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


著書紹介


特集記事

作田勇次の思うてること

PAGE TOP